僕の小規模な失敗 感想

 最近は1週間が経つのがとても早い。月曜日は授業を受けて課題をやってyoutubeを見て寝る。火曜日は1限の結構難しい講義(先生がむかつくが有能であり、講義は面白いため脳が破壊される)を必死こいて受けて課題をやって寝る。水曜日は英語の授業を適当に受けてyoutubeを見て寝る。木曜日は4限と5限の講義を必死こいて受けて、直前まで溜め込んだゼミの課題を夜遅くにヒイヒイ言いながらやりつつ金曜日を迎え、1から5限まで講義を必死こいて受けて課題をやって寝る。土日はバイトにいってダラダラ過ごしたらもう月曜日ッ!なんと非生産的か!なんと堕落していることか!日々の雑務に追われているだけではないか!今回読んだ作品はそんな私にぴったりの漫画である。

 それが『僕の小規模な失敗』である。作者は福満しげゆき先生。この漫画は作者の自分語りである。最近、『GANTZ』でお馴染みの奥浩哉先生が福満先生の4コマ漫画をリツイートし、バズった。その4コマ漫画が結構面白く、単行本を買ってみた次第である。感想書いていくゥ!

 

                 あらすじ

 このままではすべてがダメになる!そう思った「僕」は工業高校を中退し、なんとなく漫画家を目指す。しかしあっさり挫折し、定時制高校に入る。このとき、18歳。勉強もできず、モテず、漫画もパッとしない。「僕」の将来はどうなってしまうのか!?

 

                  感想

 この漫画を読んで真っ先に思ったのがこれワシのこと書いてへん??である。「僕」はめちゃくちゃ根暗である。勉強はできず、モテず、漫画も上手くいっていない。そんな「僕」は毎晩天井をじっと見ながら人生に絶望するのである。この心情めちゃくちゃに共感できるッ!なんか寝る前に不安になるやつッ!人生への漠然とした不安というものを上手く描いている。

 そんな「僕」はなぜか行動力はある。定時制高校に入ると、何かしなきゃという思いに駆られ柔道部を1から作り(というのもその高校には柔道部がなく、部員を5人集めることができれば部を作ることができた)、大会でそこそこの成果を出す。漫画家を諦めきれなかった「僕」は出版社に漫画を何本も持ち込む。漫画を描くためのモラトリアムを得るため、大学進学を考えた「僕」は推薦を得るため生徒会に立候補する。などなどめちゃくちゃ行動するのである。もうどうにでもなれという気持ちである種の破滅願望があるのではないかと思うが、それでも行動し、ある程度プラスに働いている。

 こうした「僕」の姿を見ていると絶望的な気持ちになると同時に希望も湧いてくる。私は勝手に「僕」を自分と同じ人間なんだと思って読んでいたが、結果行動力あるすげぇやつじゃん。。。とガッカリした。ダメ人間は同じダメ人間を見つけて安心したくなるものである。あいつがダメなんだし俺がダメでも大丈夫とある種の開き直りをしたくなるものである。一方で、似たような人間「僕」が行動して人生にプラスにはたらいているところを見ると俺でもちょっと頑張ればこうなれるんじゃね!と思わせてくれる。この作者は自分の弱さを隠さず見せてくれる。正直さが読んでいて伝わるから自分に真摯に向き合ってみようと思える。

 この漫画には後半に最大のミステリーがある。というのも、「僕」はずっとモテないでいるのだが、とある女性(いわく美人らしい)に恋に落ち、ストーカーし、最終的に結婚するのである!?ストーカー行為に及んでいるのにもかかわらず、結婚とはこれいかに!?こう書くとストーカーといっても若気の至りを誇大表示してるだけでしょ!と思われるかもしれない。しかしまごうことなきストーカーである。以下がその行為である。なんどもしつこく交際を迫る。なんどもしつこく電話する。その結果、女性から「あなた怖い、もう会わない」と言われる。においをかぐ。セクハラする。あなたはストーカーじゃありませんか?という手紙をもらう。使用済みのストローなどを集める。結構やばくね!?正規のストーカーだ!しかし、何故か付き合い、結婚に至るのである。女性側の視点がないため何故結婚しようと決めたのその動機が分からないッ!シャーロックホームズもコナンも金田一も解き明かせない究極の謎である。勝手に「僕」と自分を重ねていたのが恥ずかしくなってきたぞッ!こいつリア充やんけ!

 とまあ終盤に最大の謎が訪れるという浦沢直樹先生もビックリの展開であるが、やはり「僕」のメンタリティには共感を覚えるし、青年の不安感を丁寧に描いた名作である。福満しげゆき先生はあとがきで「死にたい」や「生きているのがイヤ」と思っている自分を肯定してみようとこの漫画を描き始めたという。作中で「僕」は人生に絶望しながらも、どこか社会と折り合いをつけて生きていこうとしている。ダメながらも行動している。そうした姿勢は読者の胸をうつし、辛いけどもうちょっと生きてみようという気にさせてくれる。この漫画を通じて自分と向き合いたいダメ人間諸君は是非読んでみてはいかがだろうか。

 

 

僕の小規模な失敗

僕の小規模な失敗