生きるための日本史 あなたを苦しめる立場主義の正体 感想

おはよう!こんにちは!こんばんは!KAIです。

最近、安冨歩先生が新刊を出しました。その名も『生きるための日本史 あなたを苦しめる<立場>の正体』です!!この本はすごいですよ!なんとAmazonで買うと5000円+税で買えますが、一月万冊というyoutubeチャンネルで買うと2万6800円もします。解説動画付きなので、それを高いとみるか安いとみるか……

わざわざ自著について解説までしてくれる人はいないから、すごい嬉しい限りです。分からない点とかが分かるようになったりならなかったりするし。貧乏大学生の私にとって、高い出費だったが隅々まで読んで取り戻そうとしつつ、バイトをいっぱい入れるインセンティブにしようと思います!!

 

 

生きるための日本史

生きるための日本史

  • 作者:安冨 歩
  • 発売日: 2021/03/26
  • メディア: 単行本
 

 

感想書いていくぅ!!

 

 

ざっくり要約

 

歴史とはどのような影響を与え、今の自分を形作っているのか。「私の世界史」の構築が大切。

世界は予測不可能で非線形

人間には限界があり、世の中語りえるものと語りえないものがある。

「語りえないもの=神秘」を侵害する暴力の研究を行う者、合理的な神秘主義者になるべき。

経済学の価格決定論は語りえないものを語ろうとする悪しき例の1つ。価格は人々の納得で決まること以上のことは言えない。

経済学は「神秘」を受け入れた上で経済が上手くいかないのはなぜかを考える学問になるべき。

日本は「立場主義」が蔓延る国。立場には役が付いている。役を果たすことが絶対であり、立場を守るために何をしてもよい。そして他人の立場は侵害してはいけない。

立場主義が生まれたのは、明治に徴兵制が敷かれ、家から個人に社会の単位が移行したから。立場上仕方がないという理由で大日本帝国は崩壊し、バブル経済ははじけた。

選択、自由、責任という概念は中世キリスト教世界に端を発する。近代以降の日本はこの概念を表向きは取り入れているが、背後には立場主義がある。

コンピュータの誕生によって立場主義ではうまくいかなくなった。

勝俣鎮夫は「サキ」という言葉に注目して、戦国時代以前の人間は過去を手掛かりにして未来に向かって後ずさりするという時間感覚であったと指摘。また、網野善彦は中世日本には「無縁」の原理が働いており、それが最終的な人間の逃げ場として機能していたことを指摘。

語りえない世界を感じつつ、未来に向かって後ずさりすることが現代社会に求められているのではないか。

 

感想

 

 ざっくり要約といったものの、要約できている自身はない!きっぱりと断言する!要約は苦手なので、ちゃんと本書を手に取って、買って読むのがよろしい。

 やはり、安冨先生の本は面白い!!物事の本質を捕えようという鋭い視点がある!!買ってよかった!!

 現在、経済学部に所属している僕。経済学部に入った当初はきっと知的好奇心は満たされ、毎日ワクワクするもんだと思っていたが、今となってはなんだか経済学はつまらない。
 その理由が明かされたように思う。「神秘」が語りえるものを支えているという事実を直視せず、無理やり定式化しようという態度がやる気を失わせていたのである。
 安冨先生の価格決定論は最初見たとき、爆笑してしまった。価格は人々の納得で決まります。それだけ。そりゃそうでしょと思うと同時に、無理やり数学をこねくり回して定式化しようとしている経済学者がなんだか滑稽に見えた。

 世界は予測不可能で複雑すぎるという事実も素晴らしい。人生が色とりどりで豊かに見えてくる。いい大学入り、大企業に就職するか、安定した公務員になれ!!という周囲の圧力をはねのける力がある。計画し、予測を立てようとしたところで無駄なのである。自分の感覚に正直に生きた方が上手くいくという事実は僕に救いをもたらした。

 立場主義という概念はとても身近に思えた。というのもゼミの論文のテーマ決めにて、とある人がテーマ決めてくれたら後は頑張るのにというような発言をしていたからである。テーマを決められる自由を放棄して、私に「役」を下さいと言っているようにしか聞こえなかった。やはり与えられた役があれば頑張れるのに、与えられなければ自分が何がしたいというのがない人間が多いんだなと知り、改めて安冨先生の慧眼に感服した。

 選択、自由、責任が中世キリスト教の概念であるというのはかなりの衝撃だった。宗教にうさん臭さを感じる日本人は多いが、まさか普段使っている言葉にそういう概念が混じっているとは!!
 これを知っているか知らないかで生き方は変わってくるだろう。というのも、学校では責任とか自由という言葉を平気で押しつけてくるからである。自分を律して意志を強く持て!!責任観を持て!!職業選択の自由が人にはある!!などなど。こういう言葉になんとなく嫌な感じを覚え、心の中で反発していたがそれは間違っていなかったようだ。
 キリスト教の概念で人類普遍のものではない。なんなら哲学では、意志とか責任って成り立たなくね……という議論もあるくらいだ。そんな言葉で僕らを縛らないで!!コントロールできると思うな!!と思う。

 無縁の原理は今後、多くの人間を救うに違いない。有縁の世界はなんだか息苦しい。常に周囲の人間や法律、暗黙の了解によって監視されているように感じる。無縁の世界があると知っていれば、全てが嫌になったときにそこに逃げ出せばいいんだと思える。最近、山奥ニートという本を読んだが、そこでの生活がイメージされた。自分も有縁の世界が嫌になったら、山奥でニートをしたいと思いますので、誰か一緒に暮らしましょう!!

 本書で最もいい言葉なのが、過去を直視しつつ未来に向かって後ずさりするである。僕らの世代の人間は昭和のオジサンたちが考えるような未来はない。給料は右肩上がり、いい車、新しい家電を買って、会社でめちゃくちゃ働き、老後をゆっくり過ごす。このような人生を送ることができない。日本は貧しくなったし、これから先送りにしてきた問題が噴出するだろう。
 そうした時に、もう無理だと、生まれてくるんじゃなかったと思うのではなく、自分には何が残されているのかを確認しつつ、未来に向かってゆっくり進むという生き方を提示してくれた。未来を設計していくという傲慢を捨て、過去に自分が得たもの失ったものを直視つつ、今の自分に何ができるか考える。この態度はコロナ禍でますます混乱を極める社会で有効だろう。
 過去とは先人たちの功罪であり、日本史や世界史でもあるから、自分と歴史との関わりを見ていくことで自分の持っているものは何かということを認識できる。「わたしの日本史、世界史」という概念はそういう意味で大切だ。今度、わたしの日本史、世界史という題でnoteに記事をあげようと思う。

 

もっと詳しく知りたい人向け

 

 立場主義神秘的な合理主義私の日本史、世界史という概念は安冨先生の過去の本にも書かれている。それを読めば理解が深まったり深まらなかったり……ますますわけわからなくなる可能性もあるが、とにかく読んでみよう。

 

親鸞ルネサンス――他力による自立

親鸞ルネサンス――他力による自立

 

 親鸞の他力概念を現代社会に応用しつつ、「私の日本史」という概念を構築。

 

 

合理的な神秘主義‾生きるための思想史 (叢書 魂の脱植民地化 3)

合理的な神秘主義‾生きるための思想史 (叢書 魂の脱植民地化 3)

  • 作者:安冨 歩
  • 発売日: 2013/04/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 数々の思想家、哲学者、宗教家の考えをたどりつつ、合理的な神秘主義に到達する本書。魂の脱植民地化のシリーズはどれも読みごたえあり。

 

 

 立場主義は安冨先生の数多くの本でふれられているが、自分の中ではこの本がオススメ。いわゆる専門家と言われている人たちの言語の欺瞞がよくわかる。

 

おわりに

 

 やっぱり安冨さんの本は素晴らしい。今後の生き方を提示してくれた。解説動画を全部見ていないので、それもしっかし見て理解を深めていきたい。2万6800円払ったかいがあるというものだ。僕がバイトで稼いだ諭吉たちが成仏していく姿が見えるよ………!!

 生きるための日本史が届いた次の日に、安冨先生の主著『経済学の船出』が届いた。これは一回、図書館で借りて読んだが、難しかったので手元に残しておこうと思って買った。3万5000円する本である!!!!解説動画付き。素晴らしい本であるし安冨さんにお金を落としたい気持ちがあるとはいえ、かなりの出費であった。しっかり読み込んで自らの血肉として、元をとって、諭吉たちを成仏させたい思う!!南無阿弥陀仏!!

そのうち、『経済学の船出』の感想もあげるので是非読んでください!!