カムイ伝①〜③感想

 最近(といっても3週間ほど前ではあるが)、ゼミの先生が紹介していた漫画がある。それが『カムイ伝』だッ!1964年から1971年まで『月刊漫画ガロ』で連載されたこの漫画。作者は白土三平。昔の漫画だと侮ることなかれ。「権力」、「差別」、「自然」、「革命」などなどあらゆるテーマがそこには詰められている!(とゼミの先生が言ってた)。まさに大人向けの漫画である。しかし、なかなか読むのに時間がかかる。教科書めいた漫画ではあるから、さらっと読むようなことはできないし、さらっと読むにはもったいないと思った。まだ文庫版3巻までしか読んでいないが、感想を書いていくぅ!

 

                 あらすじ

時は江戸時代。非人、百姓、武士、さまざまな階級の人々がその時代には生活していた。非人のカムイ、百姓の正助、武士の竜之進、三者の物語は次第に絡みあい。。。

 

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カムイ伝』文庫版1巻表紙。

   

                   感想

 あらすじを書くのめちゃめちゃしんどかったー。まだ、3巻で物語の序盤も序盤(文庫版全15巻)なので、おそらくそういうふうにストーリーが進むだろうなぁと思いながら書いたわけである。またキャラがいっぱい出てくるッ!非人、農民、武士の階級から沢山のキャラが出てきて、それぞれの物語があった上で全体として進んでいく群像劇スタイルである。だから物語が見えてこない序盤で、キャラがそれぞれ動いている感じだから、あらすじ結構短めッ!許して!

 さて、3巻の時点で何が言えるのかということではあるが、おそらく主人公は4人。最も差別されている階級である非人出身であり、力によって成り上がりたいと考えているカムイ。百姓の中でも最下位ランクの身分、下人であり頭の切れる正助。武士の階級であり、剣術に秀でる竜之進。そして白い狼。一匹動物おるやんかッ!と思うかもしれないが、最序盤に最もページを割かれている存在なのでおそらく主人公。この三人と一匹は階級が全然違うのだが、共通点がありどいつもこいつも時代に翻弄され差別されているということである。カムイは非人が故に百姓から石を投げられ、非人であるが故に粗末な生活を送らざるを得ない。正助は百姓の最下位ランクなので、やっぱり周りからよく見られず、年貢を納めなければならないから必死に働く。竜之進は差別というよりかは武士階級の政争に巻き込まれ、恋人を失う。白い狼(名前はカムイというのだが、人間の方と被るのでここではこう表記する)は毛の色が他の狼と異なるが故に差別され、群れを入れず作れず、基本的に単体で獲物をとらなければならない。とこのようにめちゃめちゃな境遇であり、現代社会ではありえない状況下の中必死に足掻き、もがき、生きていくのである。もし私がこの時代に生まれたらストレスですぐに禿げてまうわ!!

 なんといっても胸糞が悪いのが、百姓と非人の関係である。彼らは権力者によって互いに互いを憎み合うように仕向けられている。例えば非人は死刑を執行したり、死体の解体などの"汚れ役"をやらなければならない。それ故、百姓からは蔑みの目で見られ石を投げつけたりする一方、非人が問題を起こせばそれを取り締まるのは百姓であるから、非人も百姓をあまりよく思っていない。こうした双方向の憎しみあう構造が権力者へ不満を向かわせないようにしていると白土三平先生はいう。そして主人公たちはその構造の窮屈さ、理不尽さ、矛盾等に皮膚感覚で気付いておりさまざまな行動をとっていくのである。純粋に主人公を応援したくなる漫画である。まだ3巻までしか読んでいないのでなんとも言えないが、おそらく殿様をぶっ倒すところまで話は進むと思うからそれを見るのがとても楽しみであるッ!

 ただ、一筋縄ではいかないだろう。というのも非人の中には権力者のもとに仕え、あらゆる工作を行うものがいる。また百姓の中にも身分があり全然まとまりがない。これだとジャンプ的に仲間を集めて、さあ革命だッ!ドン!とはならないだろう。約260年間続いただけあってさすがの統治機構だぜ!徳川家康はきっと天国で織田信長豊臣秀吉にどうだすげーだろってマウントを取っているに違いない。まだ3巻であるからどう転ぶか分からないけどね。

 この漫画を読んでいると、そういえば江戸時代って階級社会だったよなぁと改めて認識させられる。近年、江戸時代は実はすごくて快適だったとか様々な言説を聞くことが多くなったように感じるが、身分制度などの闇の部分を忘れてはならないと思った。職業選択の自由があって、移動の自由があるというだけでやはり資本主義万歳!って感じ。なんだかんだ批判されることの多い資本主義だが、そうした権利の保障という面で見ればどの時代よりもいいよねー。今日から資本主義の豚として生きようと思います🐷。ブーブー。

 私が一番注目しているのが、白い狼くんである。どう物語に絡むのか期待! 白い狼くんはなかなか可愛そうな境遇だったから、めちゃめちゃ応援したくなる!彼は、3巻でついにバディの片目の狼くんに出会う。一匹狼を卒業し、仲間を手に入れた(まあ仲間というのは人間の勝手な判断であり、生きるために行動を共にしているだけかもしれんが)。まだ、カムイや正助とはあまり絡みがないからどう物語転ぶか非常に楽しみである。

 最後になぜカムイ伝を読んだのか。冒頭で書いたとおり、ゼミの先生が勧めていたというのはもちろんそうである。しかし、それはきっかけであり、前々から読んでみたいなぁと思っていた。一番の理由は『ジョジョの奇妙な冒険』作者の荒木飛呂彦先生が影響を受けたと公言しているからであるッ!私はジョジョが大好きで、荒木飛呂彦先生の他の漫画も大好きである。そうしたルーツを知るという意味で『カムイ伝』を読むことにした。荒木先生がどういうところに影響を受けたと思われるかこのブログで発信していきたい。3巻まで読んでみて荒木味を感じるところは、ナレーションが近いのかなぁと思った。ジョジョではよく小気味のいいリズミカルなナレーションが入る。『カムイ伝』でもナレーションを多用して描写の説明やウンチクを挟んでくる。この部分は似ているッ!ルーツを辿るのって面白いねッ! 

 『カムイ伝』は多くのテーマが込められている。非常に勉強になる漫画である。子供の娯楽ではないぞというところを見せつけてくれる。日本史好きな人、荒木飛呂彦先生が好きな人、理論的なためになる漫画を読みたい人にはぜひオススメ!

 

 

決定版カムイ伝全集 カムイ伝 第一部 全15巻セット

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  • 作者:白土 三平
  • 発売日: 2006/05/15
  • メディア: コミック