バトル漫画のような理論と理論のぶつかり合い!20世紀論争史 現代思想の源泉 感想

おはよう!こんにちは!こんばんは!KAIです。

突然ですが、僕はバトル漫画が大好きなんです。ジョジョの奇妙な冒険ドラゴンボールONE PIECEBLEACHHUNTER×HUNTERなどなど、そこそこ読んでますし、もっともっと読みたい!!

バトル漫画の面白さの1つがどっちが強いんだ!?という純粋な問いにあると思います。才能あるキャラとキャラのぶつかり合いにワクワクしてしまいます。

今回紹介する本も、そんなバトル漫画のワクワクが詰まったものとなってます!まあ、中身は20世紀の科学、哲学、思想の論争なんだけどね………それでは紹介していくぅ!

 

 

 

あらすじ

 

 20世紀の思想がそれまでに比べて複雑なのは、コンピュータや遺伝子操作などの科学技術が飛躍的に発展した結果、そもそも人間とは何か、知性とは何か、存在とは何か……といった問いが複雑化し、本質的に深まった点にある。
 もはや「科学を視野に入れない哲学」も、「哲学を視野に入れない科学」も成立しない時代を迎えた今、改めて世紀を代表する知の巨人たちが繰り広げた原点の論争を振り返る。この「知」の戦いの記録は、現代思想を理解するために必須のものである。コーヒーをこよなく愛する「教授」と明晰な「助手」が織り成す時にユーモラスで知的な対話、世紀を渉猟する全30話を収録する。

 

感想

 

 20世紀の30もの論争が教授と助手の対話という形式で掲載されている。20世紀とはどんな時代だったのかざっと知りたい人にはオススメだ!!

本書の魅力の一つは天才学者の名前がズラズラ出てくるところである。「登場人物、全員天才。」というキャッチコピーが付きそうなくらい!!そんな天才たちが自分の理路整然とした理論を知的にぶつけ合う様はまるでバトル漫画のようッ!

バトル漫画好きにはオススメである。ここでは、何個かの論争をピックアップしたいと思う!!

 

「認識」とは何か? ボーアVSアインシュタイン!!

 

量子論の分野において起こった論争。1927年にドイツのヴェルナー・ハイゼンベルクが「不確定性定理」を発見した。

教授:
光は電磁波の一種だから、ミクロの対象の位置を精密に測定したければ、対象が一回の波の振動に埋もれないように、短い波長の光を使う必要がある。ところが、波長が短くなればなるほど、振動数が多くなり、エネルギーが高くなるため、対象の位置を乱してしまう。
(中略)
助手:
ミクロの世界では、あまりに観測する対象が小さすぎるために、測定のために用いる光や電磁波そのものが対象を乱してしまう(中略)…(p151)

このような原理を不確定原理というらしい。あんまり小さすぎると人間の観測には限界があるよっ!!ということを示した原理である。

この原理には二種類の解釈が存在する。

アインシュタイン実在的解釈

人間の観測精度の限界によってミクロの対象のの位置と運動量は本来決まっているのにもかかわらず、それを同時に知ることはできない。

ボーア相補的解釈

ミクロの対象の位置と運動量は本来的に決まっているのではなく、さまざまな状態が「共存」していて、どの状態を観測することになるかは決まっていない。

アインシュタインはミクロの物質は実在していると考えたのに対し、ボーアはミクロの物質は誰も見ていないとき、さまざまな場所に同時に存在していると考えた。

ボーアはミクロの物質をさまざまな場所を満たすように存在し、観測することである一つの形をとると考えたのである。そしてこれは量子力学の基本原理となった。

誰も見ていないものであってもそこに実在しているはずだと思うのが普通ではないだろうか。例えば、今、キーボードをカタカタ打っているわけだが、そのキーボードは僕が見るのを止め、お風呂にでも入った途端、実在しなくなり色んな場所に浮遊したような存在になるだろうか。そんなわけない!と思ってしまうのだが、ミクロの世界ではそのように解釈されているという。

ミクロとマクロで原理が異なるというのは不思議だなぁ……

 

「進化」とは何か? ドーキンスVSグールド!!

 

ドーキンス「漸進的進化論」
生物は、常に環境に適応するように「選択圧」を掛けられているので、その形態は少しずつ変化していく。「進化」は漸進的に生じる。

グールド「断続平衡説」
「偶然」による種の大量絶滅が、地球上の生物に大きな影響を及ぼした。何らかの種が絶滅すると、短期間で新しい種が爆発的に増える。「進化」は断続的に生じる。

両者は進化は「偶然」起こるという点で一致しているが、漸進的か断続的かで異なっている。

もし、仮にグールドの説が正しいとすると、

人類を意図的に絶滅に追い込んで、それに適応し進化した新しい人類を生み出そうという連中が出てきそう……意図的に進化をコントロールしようというマッドサイエンティスト集団が表れて、人類を皆殺しにし、新たな人類の進化を促す。それを防ぐため一人の天才が立ち上がる!?

っていう物語どうですか!!なんか面白そうじゃない??その一人の天才は論争に破れたドーキンスの息子とかで、父の雪辱を果たす!!みたいな意気込みでさ!!

 

「正義」とは何か? ロールズVSサンデル!!

 

ロールズ→リベラル
あらゆる情報が「無知のベール」によって覆われているとき、人間はどのような社会を生きたいと思うだろうか。貧富の差が激しい社会だったら、富裕層に生まれれば幸運だが、貧困層に生まれれば悲惨である。だから、最も恵まれない個人の利益を最大化する社会を人々は選ぶだろう。人間は他者の自由を侵害しない限り自由であり、もっとも恵まれない人へ配慮する社会が正義だ!!

サンデル→コミュニタリアン
私が私でいるためには、私の人種や性別、容姿や性格、体力や能力、血統や家柄などの「共同体」における立場が不可欠である。そのような自覚なしに道徳的判断はできない。共同体における個人の善、それが正義だ!!

ロールズとサンデルの論争は現代社会に大きな影響を及ぼしている。アメリカ・ファーストを主張していたトランプ前大統領はまさに共同体の善を説いていた。アメリカの分断が起こった要因の一つと言える。

個人的にはコミュニタリアリズムはあんまり好きではない。共同体なるものと国家は結びついており、偏狭なナショナリズムを生みそうだからだ。

一方で、リベラリズムもあんまり好きではない。最も恵まれない個人のための社会を作らなきゃいけないはずなのに、それが全くできていないからだ。偽善っぷりにはうんざりである。

両者の膠着状態が現代社会の閉塞感を生んでいるのかもね!!!!

 

おわりに

 

他にも魅力的な論争がいっぱいあった。

ベルクソンVSラッセ

ウィトゲンシュタインVSポパー

カントールVSブラウアー

ゲーデルVSフォン・ノイマン

カミュVSサルトル

などなど

こうした論争を見ていくと現代思想の流れをつかみつつ、今につながる問題点が見えてくる……はず……

天才たちによる血肉湧き踊る「戦い」の歴史を是非みなさんも味わってほしい。